コラム

多くの会社のお手伝いをしていると、多くの悩みや課題を耳にします。
業種も規模も全然違う会社でも、意外と同じような悩みや課題を持っていることに驚きます。
日頃気づいたこと、目にした情報をコラムとし、少しでも経営者の方々の一助となるような情報を提供してまいります。

2012年3月アーカイブ

いよいよ廃止となる教育訓練費の税額控除

 教育訓練費の税額控除が今年の3月末でいよいよ期限切れとなります。
これは、中小企業が負担した教育訓練費について一定割合の税額控除を認める
制度です。人件費に占める教育訓練費の割合が0.15%以上かつ0.25%未満なら、
その教育訓練費の額に「(教育訓練費割合-0.15%)×40+8%」で算出した
割合を乗じた額を税額控除限度額とし、0.25%以上なら12%相当額までの税額
控除が認められます。教育訓練費は、以下のものが対象です。

 (1) 使用人に対して教育訓練等を自ら行うために講師や指導者に対して支払
   う報酬、料金、謝金及び施設・設備の使用料等

 (2) 他者に委託して教育訓練等を行う場合に、その委託先に対して支払う費
   用等

 (3) 使用人を他者が行う教育訓練等に参加させる場合に支払う授業料、受講
   料、受験手数料等

 (4) 教育訓練等の用に供する教科書、教材などの購入や製作に要する費用等

 同制度はもともと平成23年3月31日をもって廃止される予定でしたが、ねじ
れ国会や東日本大震災の影響で国会審議が滞り、「つなぎ法案」によって昨年
6月30日まで3カ月延長されました。さらにその後、棚上げとなっていた平成23
年度税制改正法案から与野党合意がなされた部分だけを切り離した新法案の成
立により、平成24年3月31日まで延長されることとなった経緯があります。

 平成24年度税制改正法案にはさらなる延長の記載はないため、このままいけ
ば今年3月31日をもって廃止となります。

 とはいえ、同制度は「平成24年3月31日までに開始する事業年度について適
用できる」という規定となっているため、教育訓練費の支出予定がある会社は、
タイムリミットを頭に入れて慎重に対応することをお勧めします。

最終更新日:2012年03月29日

「中小企業の会計に関する基本要領」が公表される 

この2 月に中小企業庁より
「中小企業の会計に関する基本要領」(以下、本要領とする)が
策定され、「中小企業の会計に関する検討会報告書(中間報告)」として
公表されました。
本要領はその目的を中小企業の多様な実態に配慮し、
その成長に資するため、中小企業が会社法上の計算書類等を作成する際に、
参照するための会計処理や注記等を示すものとしています。

従って本要領の利用が想定される会社としては、
株式会社で金融商品取引法の規制の適用対象会社及び
会社法上の会計監査人設置会社を除く会社とされています。
従来からある「中小企業の会計に関する指針」は
「会計参与設置会社が計算書類を作成する場合には本指針によることが
適当である」とされていますが、本要領利用会社においても当該指針に基づいて
計算書類を作成することを妨げないとしています。

各論として示されているものをタイトルだけ挙げると次の通りです。

1.収益、費用の基本的な会計処理 2.資産、負債の基本的な処理
3.金銭債権及び金銭債務 4.貸倒損失、貸倒引当金 5.有価証券
6.棚卸資産 7.経過勘定 8.固定資産 9.繰延資産
10.リース取引 11.引当金 12.外貨建取引等 13.純資産 14.注記

また様式集として貸借対照表、損益計算書、記載上の注意、
株主資本等変動計算書(横形式)、株主資本等計算書(縦形式)、
個別注記表、製造原価明細書、販売費および一般管理費の明細が
示されています。

以上のような内容が本要領には示されていますが、
いずれも会計を理解するための基本的な内容であり、
実務上本要領で示していない会計処理の方法が必要になった場合は、
金融商品取引法における一般に公正妥当と認められる企業会計の基準、
中小企業の会計に関する指針、法人税法で定める処理のうち
会計上適当と認められる処理、その他一般に公正妥当と認められる
企業会計の慣行の中から選択して適用することとされています。

本要領は検討課題として今後の普及活用を挙げていますが、
中小企業の経営者が会計の基礎的考え方を理解するのに
役立つものと思われます。

最終更新日:2012年03月15日

法人税減税で業績悪化

平成23 年11 月30 日に、東日本大震災からの復興施策としての復興増税と、
平成23 年度税制改正案のうち一部が国会で成立し、
平成23 年12 月2 日に公布、施行されました。

この税制改正により、法人税は復興特別法人税による増税と
法人税率そのものの引き下げが行われます。
すなわち、平成24 年4 月1 日以後に開始する事業年度から法人税率は
30%から25.5%に引き下がり、
また、3 年間基準法人税額の10%分(25.5%×10%=2.55%)が
復興特別法人税として上乗せされることになります。
この結果、復興特別法人税が課される3 年間においても、
法定実行税率は差引2.7%下がることになります。

将来納める法人税額が減少することは歓迎されるべきことですが、
会計上、戻ってくると見込んだ「繰延税金資産」を取り崩す必要があるため、
今期の業績が悪化する企業が増加する見込みです。

トヨタ自動車は、2012 年3 月期連結決算(米国会計基準)の業績予想を
下方修正し、税引き後利益が当初の予想より2100 億円少ない
1800 億円になるとの見通しを発表しました。

このうち、繰延税金資産の取り崩しによる税引き後利益の減少が
700 億円程度あるとのことです。
税効果会計では、繰延税金資産及び負債の計上に際して使われる税率は、
一時差異が解消される将来の適用税率とされています(税効果に係る会計基準第二‐二‐2)。
そのため、平成24年4 月1 日以後に開始する事業年度で解消される一時差異は、
平成23 年度税制改正に基づいた法定実効税率で
繰延税金資産及び負債を計上することになります。

3 月決算会社の場合、一時差異解消時期のスケジューリングにより、
次のような段階的な法定実効税率が適用されます。

①平成27 年3 月末までに解消される一時差異
 法人税率引き下げを反映した法定実効税率に、
 復興特別法人税を上乗せした法定実効税率が適用されます。

②平成27 年4 月以降に解消される一時差異は、
 23年度税制改正のみを反映した法定実効税率が適用されます。

また、今まで積み上げていた繰延税金資産及び負債は、
スケジューリングに応じて、上記①、②の法定実効税率をもって
金額を修正することになります。
修正によって生じた差額は、当期の法人税等調整額に加減して
処理されます(個別財務諸表における税効果に関する実務指針19)。

そのため、繰延税金資産を相当額積み上げている会社にとっては、
業績の悪化要因になりそうです。

最終更新日:2012年03月01日

ページトップ