コラム

多くの会社のお手伝いをしていると、多くの悩みや課題を耳にします。
業種も規模も全然違う会社でも、意外と同じような悩みや課題を持っていることに驚きます。
日頃気づいたこと、目にした情報をコラムとし、少しでも経営者の方々の一助となるような情報を提供してまいります。

法人税減税で業績悪化

平成23 年11 月30 日に、東日本大震災からの復興施策としての復興増税と、
平成23 年度税制改正案のうち一部が国会で成立し、
平成23 年12 月2 日に公布、施行されました。

この税制改正により、法人税は復興特別法人税による増税と
法人税率そのものの引き下げが行われます。
すなわち、平成24 年4 月1 日以後に開始する事業年度から法人税率は
30%から25.5%に引き下がり、
また、3 年間基準法人税額の10%分(25.5%×10%=2.55%)が
復興特別法人税として上乗せされることになります。
この結果、復興特別法人税が課される3 年間においても、
法定実行税率は差引2.7%下がることになります。

将来納める法人税額が減少することは歓迎されるべきことですが、
会計上、戻ってくると見込んだ「繰延税金資産」を取り崩す必要があるため、
今期の業績が悪化する企業が増加する見込みです。

トヨタ自動車は、2012 年3 月期連結決算(米国会計基準)の業績予想を
下方修正し、税引き後利益が当初の予想より2100 億円少ない
1800 億円になるとの見通しを発表しました。

このうち、繰延税金資産の取り崩しによる税引き後利益の減少が
700 億円程度あるとのことです。
税効果会計では、繰延税金資産及び負債の計上に際して使われる税率は、
一時差異が解消される将来の適用税率とされています(税効果に係る会計基準第二‐二‐2)。
そのため、平成24年4 月1 日以後に開始する事業年度で解消される一時差異は、
平成23 年度税制改正に基づいた法定実効税率で
繰延税金資産及び負債を計上することになります。

3 月決算会社の場合、一時差異解消時期のスケジューリングにより、
次のような段階的な法定実効税率が適用されます。

①平成27 年3 月末までに解消される一時差異
 法人税率引き下げを反映した法定実効税率に、
 復興特別法人税を上乗せした法定実効税率が適用されます。

②平成27 年4 月以降に解消される一時差異は、
 23年度税制改正のみを反映した法定実効税率が適用されます。

また、今まで積み上げていた繰延税金資産及び負債は、
スケジューリングに応じて、上記①、②の法定実効税率をもって
金額を修正することになります。
修正によって生じた差額は、当期の法人税等調整額に加減して
処理されます(個別財務諸表における税効果に関する実務指針19)。

そのため、繰延税金資産を相当額積み上げている会社にとっては、
業績の悪化要因になりそうです。

最終更新日:2012年03月01日

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